1芯のシールドケーブルでありながら非常にワイドレンジな mogami 3368 は、楽器用シールドケーブルの一つの決定版といっても良いのではないかと思います。
しかしながら、恐らくそのサウンドの要因であろう、外径8Φという特徴があり(通常は6~7φ)、switchcraft 280 などのプラグでは、線の外径が太すぎてそのままでは穴を通らないので、ちょっと作りにくいのも確かです。
今回、頼まれ物で1本作ることになりましたので、switchcraft 280 系の普通のプラグでの作り方をご紹介しようかと思います。
材料等、必要なもの
- mogami 3368
(切り売りで必要な長さ分)
- プラグ x2個 (今回は CLASSIC PRO P12
を使用)
- ハンドリーマー(テーパーリーマー)
- その他工具類、半田ごて、はんだ、ニッパー等
普通にシールドを作る時に使う道具と必要なものは大体一緒ですが、1点、”ハンドリーマー”というものが必要になります。これは、既に開いている穴を、手動で拡げることが出来る道具です。エフェクターのアルミダイキャストケースの穴あけや、アコギのエンドピンをジャックにしたりする際に活躍します。これを使って、プラグカバーの穴径を3368が通るサイズに拡張すれば、普通のプラグでも使えますよ。というのが、この記事の内容の全てと言ってもいいです(笑)
さて、ではそのハンドリーマーは、一体どこで入手できるのかですが、大抵のホームセンターで、大体¥700~¥800位で売ってます。後は、電子部品屋さんとかでも見かけました。ネットだとamazonでも売ってますので、ハンドリーマー、テーパーリーマー
等で検索なさると良いかと思います。因みに、ダイソーにはありませんでした。
プラグの穴を拡張する
さて、実際の作業ですが、まずはプラグカバーの穴径拡張です。おもむろにハンドリーマーを突っ込んで、時計回りにぐりぐり回すと、金属だろうがなんだろうが、ガリガリと削れて行きます。スチールのブリキとかじゃなければ、特にバリも出ないので、難しく考えずに右回転です。
ちょっと削ったら、3368が通るか確認、を繰り返して、必要最低限の拡張に留めた方が、完成後、ケーブルがグラグラしないので、結線が外れにくく丈夫に出来ると思います。もし、多少拡げすぎてしまっても大した問題ではないので、別に気にしなくて良いです。
無事、3368がプラグを通るようになったらOKです。もう1個も同じように拡張して、次の工程に進みます。
ケーブル末端の処理
3368 の両端を、プラグに結線できる状態に加工して行きます。
写真は一番外側の皮膜を剝いた状態です。ハサミかカッターで、切り込みを1周させると剝ける様になります。その際、シールド線を一緒に切断してしまわないように注意して下さい。引いて切らずに、押して切るのが一応のセオリーですが、多少、2、3本切ってしまっても、特に問題は無いです。
白い繊維は根元で切った後、ライターで炙ったりして除去します。その後、芯線の皮膜も同じ要領で剝いていきます。どのくらいの長さを剝くかは、プラグと現物合わせして決めると良いです。
芯線の皮膜も同じ要領で剝いたら、シールド線と芯線をそれぞれ捻って1つにまとめて扱いやすく整形します。
こっちが最初に手をつけた方なんですが、芯線の皮膜をうっかり根元付近から剝いてしまいました。太すぎて芯線の皮膜と言う感じがしないので、外皮膜の感覚で切ってしまった。シールドと接触しなければ何の問題も無いので、取り回しの良さを重視してこうしても良いとは思います。
逆側です。芯線の皮膜は、これぐらいの長さで剝いた方が普通で良いかと。
プラグにはんだ付け
両端の処理が終わったらプラグにはんだ付けして行きます。
プラグを結線する前に、カバー、絶縁チューブを必ず通しておきましょう。通さずに両方のプラグをつけてしまうと、せっかくつけたのを1回外さ無いとカバーとかが通らないです。誰もが1度はやる失敗ナンバーワン。
こちら側が芯線皮膜を切りすぎた方です。芯線は気休めに熱収縮チューブをつけておきました。CLASSIC PRO P12 は、端子とカバーの間を絶縁する、透明の絶縁チューブが付いてたんですが、3368が太すぎて入らないので、太い熱収縮チューブで代用しました。熱収縮チューブが無い場合は、HOTの端子を気持ち内側にまげてカバーとショートしないようにしてあげれば、別に無くても大丈夫です。実際に端子曲げで対策したものを運用していますが、問題を起こした事は無いです。カバーと接触してはいけないのは、芯線を結線するホットの端子で、シールドを結線する方のコールド端子は接触しても問題ないです。
逆側です。こっちの方が普通の仕上がりかな、と思いますが、芯線皮膜が太くて取り回しが良くないのでプラグと線をまっ直ぐにし辛い気もします。
シールドのはんだ付けでは、「芋はんだは音に悪影響が~」とかが気になる点かと思いますが、どれだけこんもり盛っても、シールドやプラグ自体の静電容量の比では無いので、耳で聞いて判るような違いにはならないです。そんな事より、端子に線がきっちりくっついて、使用に際して絶対に外れないことの方がはるかに重要かと。
芋はんだが問題になる場合で考えられるのは、盛った分はんだ付け時に熱を多く持ってしまうので、可変抵抗等を扱う最に、耐熱の接着剤?の類を溶かしてしまう事がある用に思います。プラグの場合は、先端のTipがクルクル回ってしまう状態になる一因かも知れませんので、適切なはんだ量で、手早く作業する事は、そういった意味では大事かと思います。
さて、両方のプラグがしっかりくっついたら、プラグカバーを閉めて完成です。
完成
なかなか奇麗に仕上がりました。
さて、折角なので、サンプル音源を用意してみました。
こういうのは、何か他のものと比較してみないとよく分からないと思うので、3368と同じ1芯のケーブル CANARE GS-6
と、4芯のケーブル mogami 2534 でそれぞれ録音してみました。
まずはエレキベースです。3368と言えばベースだと個人的には思っております。
AtelierZ の Jazz Bass 5弦アクティブでDI録音。ケーブルをとっかえひっかえした、それぞれが別のテイクです。
AtelirZ 5string Jazz Bass(Active), TL-Audio 5001(DI Input), Focusrite 6i6
続いてギターのリアンプ。3368で録った同一のDI録音を、リアンプからアンプ間のケーブルを取り替えて比較しました。
Ibanez K7 PAF7(neck), Radial JCR
, Fender Hot Rod Deluxe
(Eminence), TL-Audio 5001, Shure SM57
, Focusrite 6i6
さて、如何でしょうか?
個人的には・・・ 正直、思ってた程には違いが出なくて、予想外でした(笑)
2534は、どうしてもドンシャリで弾いてると聞き疲れしやすいイメージがあったんですが、こうしてみると汎用性高いんですね。3368は帯域が広い上、ごく自然で、変に強調される部分があまり無いのがとても良いです。別にクリーンでなくても、ハイゲインサウンドにも良く合います。ウチでは、足回りを3368系で広く用意しておいて、必要に応じてソリッドになる系のシールドで調整する・・・と言う感じで運用しています。シールドケーブルはザックリ質感を変えれるパッシブのEQなんですよ。エフェクターと違うのは、何時でも必ず使う必要があるものだ、という点ですね。
さて、それでは今回はこの辺りで終わりたいと思います。
長文にお付き合い下さいまして、ありがとう御座いました。