シングル ハムバッカー 無段階コイルタップ

はじめに

最近、クリーン用に用意した Fender Hot Rod Deluxe を弾いてるからか、シングルピックアップが急に気になってきました。

今の自分であれば、3シングルのストラトでもそこそこ弾きこなせるのでは?と、色々調べ始めるのですが、メタルっ子としては、「ちょっとフレット少ないよな」とか「7弦あったほうが良くね?」とか思い始めるのも人情というもの(笑)しかし、7弦24フレット、SSS(3シングル)のストラトとなると、どうやら特注でもしないと無い様なのです。(過去に本家 Fender の Custom Shop と Squire から”Stratocaster Ⅶ”というのが出た事はあったらしいです。)

無いものは仕方が無いので、7弦24フレットのストラトキャスターは残念ながら諦めざるを得ないのですが、普通の2ハム7弦ギターであれば、Ibanez K7 が手持ちであります。今回はこれにコイルタップMODを施して、7弦24フレットのせめてテレキャス風味な音が出せるようにしてみたいと思います。

あと、ボディに穴を空けたくなかったので、キャビティ内に追加で回路を増やし、裏から調整する仕様にしてみました。

コイルタップのやり方(雑版)

一番簡単なやり方ですが、買ってきたピックアップを普通のハムバッカーPUとして使う最に、”束ねてショートさせ、どこにも結線しない2本の線” これをグラウンドに落としてあげるだけです。これをトグルスイッチを使って切り替えれるようにすれば、普通のスイッチ切り替えのコイルタップになります。

更には、このグラウンドに落とす最、スイッチの変わりに可変抵抗(ボリュームPOT)を使えば、なんとシングルとハムの無段階可変が可能になるそうです。”出来たら面白いのに”と一度は思った事のある夢の機能がそんな簡単に出来るとは・・・

コイルタップできない例外

ただし、この方法でさっくりとは出来ない場合があります。

・Pickup からの配線が、2本しかない場合。

Dimarzio や、Seymour Duncan 等、多少気の利いたPUなら配線は4本あるのですが。ローコストモデルのギターに最初から付いてるピックアップなんかの場合だと、Hotとシールドっぽい2本しか配線が無いことが多いです。この場合は素直に諦めた方が良いと思います。配線が4本あるピックアップを用意するか、他にもギターがあるなら別のギターに施しましょう。

・ギターが、HSH(ハム、シングル、ハム)等、HH(ツー・ハム)以外の配列パターンの場合

5WAYスイッチの HSH配列のギター等の場合、既にコイルタップを利用したPUの選択パターンが含まれていたりします。その場合は、今回の施工をそのまま施すのは大分乱暴な為。自分のギターの配線を、きちんと理解して、それに合わせた回路を考えないといけないかと思います。

・EMGなど、アクティブピックアップの場合

EMG 81TW 等、コイルタップ可能なモデルもあるようなのですが、基本出来ません。

コイルタップの仕組み(若干詳しく版)

配線を整理した図になります。紫の経路がMODで追加する部分ですね。この部分を、トグルスイッチを使って切りかえれるようにすれば、普通のコイルタップ。可変抵抗を使えば無段階調整、シングル、ハムのブレンドが出来るようになります。

配線の名称と見分け方

気の利いたハムバッカーピックアップなら大体ある4本の配線ですが、それぞれ、North Start, North Finish, South Start, South Finish, と言う呼ばれ方をします。巻き始め、巻き終わりの意味があるので、安易に + - や Hot Cold とは呼ばない方がいいと思います。

これらの配線それぞれの見分け方ですが、カラーコード(color codes)、要は線の色で見分けます。イラストでは今回のギター Ibanez K7 についてる Dimarzio の配色にしてありますが、不便な事にこれが各社バラバラで、自分のピックアップの配色を調べる必要があります。pickups color codes で画像検索すると、各社の配色が網羅してある大変有難いイラストがヒットしますので、お勧めします。

可変抵抗の適正な定数の情報があんまり無い。

トグルスイッチの場合はいいんです。スイッチオンで抵抗値0Ω、電気流れます。

可変抵抗(ボリュームPOT、potentiometer)で無段階にする場合に、何オーム(Ω,ohm)のものを使えばいいのかというのが、あまり定まった情報が無い。「自分は25K使うけど、ハム時のオリジナルの音を重視したければ500Kがいいと思う」という海外の方がいらっしゃって大変参考になったのですが、10倍以上開きのある定数のどっちでもいいとかどういう事?と思いましたので、ちょっと計算してみました。

回路としてみた場合、ピックアップのコイルを7.5KΩの抵抗として扱う 単純な分圧回路になると思うので、ブレンド時の South Bridge のボリュームは、7.5KΩ と POTの抵抗値の比率で決まるかと思います。それを踏まえて計算すると、

  • POT 500KΩ : South MAX VOLUME 98.52%
  • POT 250KΩ : South MAX VOLUME 97.08%
  • POT 100KΩ : South MAX VOLUME 93.02%
  • POT 50KΩ : South MAX VOLUME 86.95%
  • POT 25KΩ : South MAX VOLUME 76.92%

多分これで合ってると思うんですが、そもそもPU全体が15Kohmの場合というのが、仮に当てはめただけの数字なので、PUの銘柄によって大分違うだろうし、そもそもこれ直流抵抗値ですし、色々と雑だと思います。(Dimarzio DP708 が11K位だったんで10kで計算した方がよかったかも)

それでもこうして見ると、ハム時に本来のパワーを出そうとすると、500Kぐらいを使ったほうがいいけど、割りと急激に上がっちゃうので、中間の音色を調整しずらくなる。・・・という事のようですね、どうやら。25Kohmでやってた方は、間の中間音色をエンジョイしたかったんでしょう。せっかく無段階なんだから、その方がいいですよねそりゃ。なかなか難しい選択です。

Layout(実態配線図)

さて、こちらが今回インストールした追加の回路。諸々を踏まえて万全を期したつもりの潰しの利く仕様になっております。

スイッチオンでリア、フロント用それぞれ両方のPOTが利くようになり、シングル-ハムを無段階で可変できます。ノブは好きな音になる中間点にしておいて、スイッチでハムと即座に切り替えが出来るという事ですね。わーステキ

スイッチオフで完全にこの回路は無かった事になるので、SouthBridgeも100%の音量で鳴り、インピーダンスの低下等の影響の可能性をつぶせると言う、神経質な方にも安心な仕様です。

POTは、100KΩ Aカーブで作ってみました。

出来上がったものがコチラになります。

その辺にあった木片をなんとなく切って、キャビティの形状に合わせて成形しました。

裏から見るとこうなっております。

これをキャビティ内に収めて、コントロールは裏から行います。キャビティの蓋はしょっちゅう弄るのと、アレ?と思った時に直ぐ目視で確認したいので元から開けっ放しです。断線のリスクが高くなるのでお勧めはしません。閉めた方が良いです。蓋のシールド効果については、ピックアップという強力な受信機があるエレキギターでは正直・・・

キャビティ内に取り付けて完成

なかなかにピッタリと収まりました。ノブを付けてもボディ面より出っ張らないので、勝手に設定が変わったりせず安心です。

固定ですが、プリット ひっつき虫 を使いました。ピエゾピックアップをアコギに貼る時なんかに活躍する、ファイバーねんど? こねると柔らかくなって、貼り付け面に跡が残らず、何度でもやり直せる便利グッズです。手軽に出来ますが、ガチガチに固まったりするものではないので、さほど強度は出ません。

キャビティ底にスポンジを敷いた上で、側面にひっつき虫でモールドを作って、むぎゅぅぅ と押し付けて出来上がり。

録音サンプル

FenderとLaneyで、クリーン、ディストーション、それぞれ録音サンプルを用意しました。No EQ、No Comp、ピックアップの出力差もそのままです。

Clean / Fender Hot Rod Deluxe

[再生順] リア(ハム、ブレンド、シングル)、センター(ハム、ブレンド、シングル)フロント(ハム、ブレンド、シングル)

Distortion / Laney IRT-60(head) ENGL212

[再生順] リア(ハム、ブレンド、シングル)、センター(ハム、ブレンド、シングル)フロント(ハム、ブレンド、シングル)

Equipments

[Pickups]
Bridge : Dimarzio PAF7 DP759 / Neck : Dimarzio Crunch Lab 7 DP708 / Guitar : Ibanez K7(Mod)

[Amplifire]
Clean Amp : Fender Hot Rod Deluxe - Fender Special Designed Speaker(Eminence) / Distortion Amp : Laney Ironheart IRT-60 head - ENGL212 cab (Vintage30 x 2)

[Other]
Microphone : Shure SM57 / Micpreamp : TL-Audio Ivory 5001 / Interface : Focusrite Scarlett 6i6

感想

弾いてみた感想ですが、すごい楽しいです(笑)シングルとハムの比較って意外とやった事無かったんですが、シングルピックアップ時の、音の輪郭とかよく言われる、アタックの喰いつき?が、やっぱり独特なものがありますね。オケに突っ込んでも目立ちやすいと思いますし、シングルの方が好きと言う方々の気持ちがちょっと分かった気がしました。ただ、音は良いんですが、やっぱり凄いノイズを拾うので、完全にシングルの状態でレコーディングするのは個人的にはキツイです。

シングル&ハム、ブレンド時の感想としては、100K Aカーブで作っても、ちょっと回すと直ぐハムになる感じでした。ノイズが消えたなと言うぐらいに回すと、すっかりハムの音になっているので、シングルピックアップのノイズ対策としては微妙です。音色としてどうかと言う話になると、基本ノイズの多いハムバッカーになってしまうので、あまり使えるセッティングは多くない様に感じました。その中で、コレは使えるなと思ったものでは、ほんのちょっとだけハム成分を入れる設定が良かったです。大体シングルの音色で、そこに若干低音が補強される感覚でした。録音サンプルでのノブの位置は大体9時位です。

それでは、この辺りで終わります。長文にお付き合い下さいまして、有難う御座いました。