Fender TexasSpecial Bridge vs Saymour Duncan SL59-1b vs SL59-1b CoilSplit

今、メインで使っているストラトは、Anboy OS-55 という、90年代の Fujigen 製のギターです。

アッシュボディ、メイプルネック、ローズ指板で、PUはSSS配列、Fender Custom Shop の Texas Special を3つ入れて使っています。70年代の MATSUMOKU製 Greco や、YAMAHAのSC800 もあるのですが、ウチにある中では一番普通のストラトの音が出てくれるので、メインのストラト要員になっております。

今回、このギターで、”リアがハムバッカーじゃないと困るような曲”を弾かないといけない可能性が出てきまして、シングルサイズハムを物色していたのですが、タイミング良く出物があったので、換装がてらサンプルを録音しました。

Saymour Duncan SL59-1b

今回換装するPickupがこちら、 Saymour Duncan の SL59-1b です。Little 59 だか、Lil59だか、いろんな呼ばれ方をしているストラト用のシングルハムの中では定番のモノかと思います。

もちろん中古で入手したもので¥5,500 位だったかと思うのですが、純正ケースのシールの記述を見るに、ESP経由で入ってきたもので、定価 ¥22,000で販売されていた様です。高いw 今、新品で入手する場合だと、サウンドハウスさんが安くしてくれていますので、其方がおすすめです。それか中古。

裏面もちゃんと写真撮りました。

息の長いモデルなので、時代によってかなり違う仕様のものがある様なのですが、裏が基盤なので、結構新し目の個体のようです。直流抵抗は 11.8k ohm 位でした。North Bridge だけだと 5.8k だったので、North と South ぴったり半分割位で変なことはしてないと思います。Duncan叔父さんはあんまり変なことしない。Dimarzio は南北で巻き数違ったり、あの手この手の謎仕様がいっぱいあるっぽい。

PAFを意識した物だと思ってたので、勝手にアルニコ5かと思ってたんですが、意外とマグネットはセラミックでした。11.8kでセラミック・・・良さそう!

Anboy OS-55

こちらが今回SL59を搭載するギター、Anboy OS-55 です。

現状、Fende Texas Special が3つ入っています。とっかえひっかえして調整した際に、うっかりリアだけPUカバーが白になってしまっています。

Anboy ってなんぞ

このAnboyなるFujigenのブランドですが、90年代に満を持してFujigenが展開したオリジナルブランドらしいのですが、当時は売れなかったらしく、今でも知名度も人気も何故か全然ないです。OSはOdesseyというシリーズらしく、のちのFujigenの自社ブランドにもあるモデルっぽいので、結構狙い目だと思います。

下位グレードはMDF

注意点として、Anboyの下位のモデルには、ボディが木くずを接着剤で固めたものと思われる、木目も何もあったもんじゃない謎のMDF材のものが多く見受けられます。当時のFujigenはめちゃくちゃ自信があったらしくて、「これが未来のバスウッドだ!」位の意気込みを感じるのですが、まぁ避けた方が良いかと思います。ジャパン・ビンテージ系を狙うなら、シースルー塗装かナチュラルフィニッシュ等クリア系の塗装以外は避けるべし。

いざ換装作業

さて、さっさと換装すべくネジやら色々外しました。

Tapスイッチ用の穴の位置

今回は、Tapスイッチを付けて、一応シングルの音も出せますよ!なギターに仕上げようと思うので、ピックガードに穴を空けました。穴はVOLUMEとTONEの中間点に空けておいたので、後々「もうTAPいらんわ」と思ったら、穴を拡張して1Vol2Toneにしたり、3シングルに戻してブレンダー回路にしたりして綺麗に誤魔化せます。

問題発生、ピックガードの浮き

このピックガード3層ぐらいの積層の様なんですが、元から所々接着の浮きが有り、新たに空けた穴の周りも気泡が出来てしまってその中に削り屑が入ってしましました。

どうやら特徴的な模様のテクスチャの層が下地の層と剥離してしまっているらしく、所々べろんべろんしているのが前から気にはなっていました。

このギターは普通のストラトよりボディ形状が若干細身で、ピックガードもそれに合わせて機種固有の特殊形状になっています。つまりストラト用の適当な交換用のピックガードを買ってきても”残念な結果”にしかならないと思われます。新しく同じ形状のピックガードを用意しようとすると、元のピックガードをトレースして、生板から削り出すという、自分でやりたくない(やった事無い)作業上位にランクインする作業が予想されます。「CNCルーターでもない限り絶対にチャレンジしないぞ!」と思っている作業の一つです(笑)

ここは是が非でもオリジナルのピックガードを使う!という固い決意の下、今回は補修を試みます。

ピックガードの積層剥がれ補修

似たような作業例が無いか、一通りググって調べてみたんですが、無いんですね、これが。経年劣化としては、割とありがちな症状だと思うので、ちょっと調べたらあるだろうと思ったんですが、どうやら自力で方法を開発しないといけない模様。

とりあえずは、中途半端な剥離状態がうっとおしいので、一旦べりっと全部はがして、キッチンハイターで漂白を試みました。ほぼほぼ原液をぶっかけたこの状態で、3時間程様子を見るも、残念ながら大して効果が無さそうなので、早々に諦めました。

プラスチック系の着色ってまぁ落ちないですよね。ミントグリーン!と言い張りましょう。

選ばれたのは水のりでした。

どうやって再接着するか悩んだのですが、最近別の工作でいい感じだった”障子用の水のり”を使う事にしました。

“障子・ふすま用 のり”とかの名称でダイソーに売ってます。

「水のり」と聞くとなんか弱そう・・・と思っちゃいますが、接着強度は木工用ボンドと同じぐらいあるらしいです。違いは水で溶ける事。作業時にやんわり水で溶いて粘度の調整が出来るのが良いです。ギターが水没したりすると、剝がれてしまうかもしれませんが、ギターが水没してる時点でそれ所ではないですね!

木工用ボンドでも出来るかもしれないんですが、塗って張り合わせる際に、いきなり結構なくっつき具合になると思うので、落ち着いて位置の微調整が出来ないのではないかと思います。更に、「ちょっとずれたので一度剥がしてやり直そう」といった場合に、接着面に残ったボンドを綺麗に除去するのがかなり難しいと思います。

平らな面を用意して接着面にずびゃびゃっと伸ばします。スキージー代わりにお好み焼きの小手っぽいプラスチックのなんかを使いました。

貼り合わせて、上からスキージーをすいーっと押し付け、気泡と余分なのりを淵へ押しやります。

こんなもんかなと思ったら、濡れ雑巾かなんかで余分なのりを除去。ひっくり返して裏もきれいにしたら後は乾燥です。

重石として30cm x 30cm の御影石を2枚乗せました。スピーカーの下に敷く様に用意したやつです。

これで後は乾燥です。ネジ穴部分に余分なのりを残しておいたので、そいつがカッピカピになったら出来上がり。

意外と早くて2,3時間程度でもうカッピカピでしたが、本来は1日は置いといた方が良いと思います。今回は急ぎだったので、乾燥機に放り込んでダメ押しして終了としておきました。

完成!

さて、無事ピックガードが補修出来ましたので、さっさとトグルスイッチやら配線やらやってしまいました。

Saymour Duncan のピックアップ配線のカラーコード

黒:North Start、白:North Finish、赤:South Finish、緑:South Start

のようです。順当にハムバッカーとして取付る場合、をHotにして、をCold、赤と白はショートさせて浮かすか、Tapスイッチにする場合はグラウンドに落とす。Groundの単線と合わせてGroundに落とす。となります。

が、この方法で普通につけたら、センターとのMixでフェイズアウトしてしまいました。ダンカンはフェンダーと位相が逆みたいですねどうやら、なんかそんな話聞いたことあるし。

「めんどくさっ!」と思いつつ、をHot、黒と単線をGroundに落として配線しなおしました。

ともあれ完成です、Neck&MiddleのPUカバーと色が揃って大変カッコ宜しくなりました!このギターは元のオリジナルのPUは白かったと思うんですが、「どう考えても黒やろ!」と思ってましたんや。

音を聞いてみようぜ!

バッチリ、換装前のTexsas Specialを含め、SL59とそのCoilSplit時の音色を録音しておきました。

順番は、Fender Texas Special Bridge – Seymour Duncan SL59-1b – Seymour Duncan SL59-1b CoilSplit、になります。

今回はアンプはVSTです。Nick Crow Lab の 8505 というフリーのもので、Bias やら Guitar Rig やら Ampeg も試しましたが、5150系のアンシミュだと一番気に入って使っています。IRは自前の ENGL 212 を鳴らして作成した物を使っております。ギターのRec時は大体これでモニターしてます。

Audio Sample

自分の感想

基本カラッとした音

フロイドローズ指板のFujigenがしっかり高域を鳴らしてくれるからかも知れませんが、SL59は、思ったよりカラっとした風味の音だなと思いました。シングルPUから切り替えても、さほどハイ落ちしてる様には感じないのは良いです。「リアの時だけまるで違う音になっちゃうのが嫌!」って人に向いてると思います。

出力は低い

ハムバッカーとしては出力は低いと思います。ハムのままでも、Neck, MiddleのPUと出力バランスが取れる位には低い。11.8k ohm でセラミックなら、もっとえげつない出力にも出来る筈なんですが、ちょっと強めのPAF位に抑えてるんでしょう。どれ位着磁するかなのか、物理的な磁石の大きさなのかは分かりませんが。

バリバリのセラミックの音

PAFを意識してそうな割には、めちゃくちゃセラミックな音がしてると思います。NorthとSouthのポールピースの距離が近いので、ハムバッカー特有のフェイズシフトした感じも控え目な為、よりハイミッドの癖が強く感じます。そもそもスラントしてる時点で、普通のハムバッカーが普通に載ってる音には絶対ならないとは思うんですが、

Coil Split はおまけ要素

シングルPUとしては、Texas Special のNeck,Middleよりもゲインが低くなっちゃうので、「一応できますよ!」以上の意味は無いかなと思います。音色としても、Fenderのシングルと比べてなんか薄い音になっちゃうので、それを生かした表現以外では使わないかなと思います。ちゃんとしたシングルPUの音が出る為には、ポールピース自体が磁性体で、あずき色の被膜のエナメル線が巻いてないとダメみたいなんで、元より分かっちゃいたんですが、「タップしたらFenderの音がする!」っていうのを求めてしまいますよね。

低域はしっかり出てる

Texas Special の Bridge で一番気になってたのが、Neck や Middle の時には鳴ってた筈の 200hrz 以下の帯域が、Bridge の時だけごっそり無くなる点だったのですが、SL59だとそこもしっかり鳴ってくれてます。youtubeなんかでJBjrと比較しているのを見ると、あまり出ないのではないかとの懸念が出てくるのですが、シングルPUと切り替えて違和感無く出てるので、好印象。

Q.メタルは出来るのか? A.出来なくはない

基本ここからTSやらで丸めつつプッシュしてなんぼなので、しばらく使って、使いこなせて来ない事には何とも言えないですが、「出来なくは無いかな?」位です。ストラトでメタルやりたいんなら、JBjr とか ToneZone S とかでいいんじゃないかな。聞かれた訳でもないんですが、この件については、自問せざるを得ないのです。

総評

ストラトキャスター用のシングルハムとして、結構な完成度の一品

だと思います。SSSのストラトに深く考えずにぶっこんでも、ちゃんとバランスが取れる様に出来ており、ストラトの音色バリエーションとしてかなり良い。半面、めちゃくちゃハイゲインなギターに仕上げたりは出来ませんし、なんでも御座れの万能選手を期待してもちょっと弱いかなと思います。

以上、SL59の換装記録でした。なんか大半がピックガードの補修だった気はしている。