はじめに
みんな大好き Zoom の MS-50G を入手したのでレビューしてみます。
アンプのセンドリターンに繋いで、空間系全部やってくれるマルチエフェクターを前から探していまして、
・とりあえず、ディレイでタップテンポ出来る
・モジュレーションとかデジタルでも良さそうなヤツを1台で出来ると嬉しい
・小さいは正義
という感じの点を重視していました。
理想を言うと、シンセのモジュールみたいに、パラレルとかでルーティング出来る自由度が欲しいんですが、そんな製品無いし、あんまり凝った事しようとすると収拾つかないので、取りあえずのつもりで買ってみたんですが、どうしてなかなか結構使える感じでした。
ファームウェアをバージョンアップ(最新はv3.00)すると、エフェクト・アンプモデルが172種類位になったりと、とんでもなく多機能なので、気に入って使ってるエフェクト等から掻い摘んで紹介します。
目次
Equipment
Guitar: Ibanez K7 / Pickups: Dimarzio DP708(Bridge) DP759(Neck) / Amp: Laney IRT-60 & ENGL 212cab / AudioInterface: Focusrite scarlett 6i6 / Micpreamp(DI) : TL AUDIO Ivory 5001 / Mic: Shure SM57 /
空間系はセンド・リターン接続でマイク録音。コンプ・歪み系はヘッドアンプ前の接続でマイク録音。アンプシミュレーターはライン(DI)録音してあります。
Compressor
Bypass / GrayComp / COMP / RackComp / SlowaaAttack
コンプレッサーです。アンプのインプットより前に接続しての録音。
GrayComp
RossCompのクローン。音はコレが一番好きなんですが、コントロールがスレッショルドとLevelしかないので、これ以上作りこめないんですよね。どうせならKeeleyの4knobの方だと嬉しかったです。
COMP
ギター用の普通のペダルコンプってこういうイメージかも知れないですね。アタックがSlowとFastのトグル切り替えだったので、癖が分かりやすいSlowにしました。
RackComp
コントロールが充実していて作りこめるので、MS-50Gでコンプ掛けるならコレを使うんじゃないでしょうか
SlowaaAttack
アタックを検出して音量を制御しているので、コンプの仲間と言えるはず。
コンプの感想
“意外とコンプはアナログじゃなくても良いのか?”と思いました。アタック等をフルコントロール出来ないとあまり使う気はしないのですが、RossCompの音は捨て難い。クリーンの時にアタックが歪んでしまうのをコンプで何とか出来ないかと何時も思うのですが、ダイナミクスが無くなるので普段使いするには至っていないです。
Overdrive Distortion
Bypass / Boost / Overdrive / Tscream / Gouvernor / Dist+ / MetalWRLD / FuzzSmile /
PE TSCC-01 noclip / PE TSCC-01 LED / PE TSCC-01 Diode
歪み系です。おまけで最後3つは実機 PracevoEffects TSCC-01 になってます。アンプのインプットより前に接続しての録音。
Boost
普通っぽいブースター・・・の筈なんですが、どちらかと言うと固定値のHPF?
Overdrive
BOSSの黄色いヤツでしょう多分。
Tscream
説明不要の緑のオーバードライブ。シリコンダイオードと4558の安心感たるや
Gouvernor
marshall guvnor はクリッピングダイオードがLEDになってるのが最大の特徴だと思います。
Dist+
MXRのディストーション
MetalWRLD
”めたぞね”さんですね。どうしようもない激歪がよく再現されてると思います(笑)
FuzzSmile
デジタルなので、温度とかインピーダンスとか環境に左右されない!
PE TSCC-01 noclip / PE TSCC-01 LED / PE TSCC-01 Diode
比較用の実機、PracevoEffects TSCC-01 のそれぞれクリッピングモード違いのサンプルです。何時も実際に使う時はこんなに歪ませないです。
歪み系の感想
まず、どれもゲインが実機の倍はある印象でしたので、基本ゲインを下げるエディットをしました。
MS-50Gの歪みは、それぞれのキャラクターの違いを凄く楽しめますし、実機の特徴の再現もよく出来てると思います。そこから踏み込んで、ゲインの増強とかもしてあるのでかなり意欲的ではないでしょうか? 一部、謎のノイズが再現されていると思しきものもありました(笑)惜しむらくは、低域がばっさりカットされる分ローミッドが盛ってあるっぽいのですが、それが凄く邪魔になる事が多かったです。
正直に申しますと、僕は既製品に満足できなくて自分でペダル作ってる人なので、MS-50Gを歪みペダルとして使う事は無いかと思います。ですが、気がついたら予定より大量のサンプルを録音していた位には楽しかったです(笑)
Delay
Delay / ModDelay / FilterhDelay / ICE Delay / SmoothDelay
ディレイ系です。アンプのセンドリターンに繋いで録音しています。
Delay
一番普通っぽいディレイ。かなりコントロールが豊富でした。あとHPFさえあれば完璧なんですが
ModDelay
残念な事にモジュレーションのDepthが無い。
FilterhDelay
ディレイにフィルター掛けると、空間系というよりは楽器の音色、表現の一部という雰囲気が強くなると思います。
ICE Delay
フィードバックに送る信号にピッチシフト掛けるとこうなるんだと思います。この時は5度にしましたが、設定できます。
SmoothDelay
これ凄く好きです。NE5532っぽい質感
ディレイの感想
まず素晴らしいのが、全部のモデルにTailの設定があるんですよ。フットスイッチでOFFにしても、ディレイ音はブツ切れにならずに減衰するまで続くというもの。T.C.Electronicの最近のディレイで、TrueBypassと排他選択になってるヤツですね。
残念だったのは、HPF、LPF等のフィルターの設定がほぼ無かった点です。空間系で低域を調整して濁らないようにするのは基本ですので、付けておいて欲しかったです。HiDampはちらほら有っただけに納得いかないw
Reverb
HD Reverb / SHIMMER REVERB / Plate / Spring 63 / HALL / ReverseReverb
リバーブ系です。アンプのセンドリターンに繋いで録音しています。
HD Reverb
たーのしーw
SHIMMER REVERB
これ凄くカオスなエフェクトなんですが、用意した元音ではあまり分からない感じになってしまいました。ICE Delayのリバーブ版みたいな感じです。
Plate
迷ったらとりあえずプレートにしとけとけば何とかなる。
Spring 63
これだけ引っ込んで聞こえるのは多分PreDelayの設定項目が無かったせい。
HALL
HD hallというのも有りましたが、HDってついてるのはキャラクターがどれも似てたのでこっちにしました。此方は実際のホールのシュミレートを意識している?
ReverseReverb
色物枠。どういう処理をしているのか全く分からない(笑)
リバーブの感想
デジタルリバーブとして十分な音じゃないでしょうか。探せば他にもっと高音質な製品はあるとは思いますが、逆に浮いてしまって馴染まなかったりしそうなのでなんとも言えない所です。
現実の空間を限界までCPUを酷使して再現するものより、個人的にはシンセっぽい音色になるリバーブが好きなので、HD Reverbみたいなのが凄い好きです。NIのMassiveをギターに掛けたいと常々思っているのですよ。
Modulation
Bypass / Chorus / DuoPhaser / Vibrato / Detune / VinFlanger
モジュレーション、コーラスとか硬派な揺れ物系ばっかりになりました。アンプのセンドリターンに繋いで録音しています。
Chorus
一番普通そうだったヤツですが、デフォルトでは深めに掛かる印象でした。
DuoPhaser
初めはこんなんオルガンにしか使えませんやんと思いましたが、1個目のRateを遅くすると、結構使いやすそうな音になりました。
Vibrato
位相云々ではなくて音程を直接、周期変化させるエフェクト。Bossのレアものってイメージでしたが新しいのがあるんですっけ?
Detune
cent 単位の Pitch と ms 単位の predelay が設定できる Detune が有るのは凄く良いと思う。Dubblerと言った方が分かりやすいかも
VinFlanger
80年代にドラムに掛かってたやつですよね!
モジュレーションの感想
ここでは紹介しませんでしたが、Z.vexのStepFilterとか、普通のピッチシフター、ハーモナイザー、オクターバーとかの色物系もちゃんとありました。ビットクラッシャーが凄い好きです。汚し系なので歪みカテゴリーだと思うんですが
AmpSimulator
Bypass/ DZ DRIVE / ALIEN / IRT60+ENGL212(RealAmp)
アンプシミュレーターとして使うとどうなのかが気になっている人もいるかと思いますので、ハイゲイン系のみを少しですが、ライン録音(マイクプリのDI直)で録ってみました。ライン録音ですが、平等な比較の為にリアンプしてあります。
DZ DRIVE
Diezel Herbert、孤高のブティック・ハイゲインアンプ。どうしようもなく高価で、どうしようもなくいい音するので困る。
ALIEN
ENGLのINVADERだったと思います。ENGLキャビはとても重くて良いのです。
IRT60+ENGL212(RealAmp)
比較用の実物アンプ、Laney Ironheart IRT-60 と ENGL 212 のサンプルです。オーバードライブ等のペダルは使わずにヘッドのみで歪ませています。LeadチャンネルでBoostはオフです。
アンプシミュの感想
実機のアンプと比べてもらったら分かると思うんですが、根本的に何か違うと思います。どのアンプモデルでも、周波数帯域が狭くて、高域、低域共に伸びない印象がしました。プリアンプの方よりは、キャビネットとパワー管の再現の方に難がある気がします。
触ってて面白かったのは、いずれのアンプモデルでもTubeって項目があって、上げると、ステレオタイプなイメージの真空管っぽい音になります。ローミッドと、ハイのピークがブーストされる感じで、Fuzzの前段のバイアス上げた時みたいな変化でした。
あとは、アンプのインプット、センドリターン、ラインの時等、繋ぐ場所に合わせた補正の設定がありましたが、ざっくりとしたEQっぽい印象を受けたので、無視して全部ラインの設定でいいと思います。
実際に使ってみないと分からなかった点
追加エフェクトの仕様
ファームフェアのバージョンアップをすると、アンプ・エフェクトモデルは、元からある100種+72種になりますが、全種類のエフェクトを本体に保存しておけるわけではないです。
USB経由でアプリケーションを使い、本体のメモリー容量を超えないように、172種の中から搭載エフェクトを選択し、一括で本体に上書きすると言う仕様になっています。1個づつとか個別の出し入れは出来ませんが、元からあるエフェクトを外す事は出来ます。
同時使用数の例外
同時に使用できるエフェクトは6種までですが、一部の重いエフェクトを使うと更に減ります。
フットスイッチの役割
フットスイッチでいつでもOn-Off出来るのは、モニタに表示中のエフェクトのみです。ただし、ラインセレクターを使えば、セレクター以降のエフェクトをバイパスするといった操作が出来ます。
まさかの初手ラインセレクター!?
タップ・テンポの仕様
TapTempoは、ストンプ長押しでTapTempo待機状態になるタイプです。ディレイタイムの設定がms(ミリセカンド)では無く、四分音符等になっている必要があるようです。
また、ストンプ長押しの機能は、デフォルトではチューナーになっており、ユーティリティーから設定が必要です。排他選択で、チューナーかTapTempoどちらかしか選べません。
Crybabyはあるのに
エクスプレッションペダルが挿せないので、ワウが踏めない。オートワウ?あれって何に使うの?
最大の長所
ここまで色々と好き勝手書かせて頂きましたが、MS-50Gには最大の長所があります。
そう、圧倒的に安い(笑)
これだけの高機能をこのサイズに詰め込んでこの値段?
もともとZoomのMSシリーズには、MS-70CDRや、MS-100BTといった上位機種があり、MS-50Gはシリーズの最廉価版の位置付けでした。しかし、年月を経ての度重なるバージョンアップによって、上位機種と同じエフェクトを搭載できるようになってしまった・・・という経緯があるようです。
同シリーズ、他のモデルとの差別化
そこまでしちゃったら、他のモデル買う人いなくなるんじゃない? と思ったのでざっくり調べてみました。
MS-50G
- 今回レビューしたもの、ギター用。
- Input : モノラル、 Output : ステレオ
- 元からあるエフェクト100種、追加エフェクトは72種、合計で 172種。
- 同時使用エフェクト数は、6
- メーカー公式ページ 参考価格
MS-60B
- ベース用の機体。BassDriverのクローンやAmpegのアンプ等が扱える。
- Input : モノラル、 Output : ステレオ
- 元からあるエフェクト58種、追加エフェクトは84種、合計で 142種。
- 同時使用エフェクト数は、4
- メーカー公式ページ 参考価格
MS-70CDR
- 空間系専用機というコンセプト。
- Input : ステレオ、 Output : ステレオ
- 元からあるエフェクト86種、追加エフェクト51種、合計で 137種。
- 同時使用エフェクト数は、6
- メーカー公式ページ 参考価格
MS-100BT
- MS系の最上位機種。ベース用のエフェクトも扱える。
- Input : ステレオ、 Output : ステレオ
- 元からあるエフェクト100種、追加エフェクトは116種(ギター用72+ベース用44)、合計で 216種。
- 同時使用エフェクト数は、6
- メーカー公式ページ 参考価格 生産間良品
思ったより差別化がされているみたいですね。MS-50Gをアップデートすれば、MS-70CDRのエフェクトも全部揃うかと思っていたんですが、そうでもなさそう? MS-100BTを完全にしても、MS-60B、MS-70CDRの全てのエフェクトは揃わないように見受けられます。憶測なので、実際どうかはメーカーさんに聞いてみないと分かりません。
“実際に使ってみないと分からなかった点”で、前途の通り、全てのエフェクトを本体に保存しておける訳ではないので、ご注意下さい。より詳しく知りたい方はメーカー公式ページのダウンロードより、全搭載エフェクトが記載されたPDFが入手できますので、調べてみて下さい。
まとめ
まとめに入りますが、あくまで個人的な感想に過ぎません。MS-50Gが前から気になっている、読んでたら気になって来た、という方は是非、買ってみるなり、楽器店で試奏するなりして、ご自分で確かめてみて下さい。めっちゃ安いからねw
MS-50Gのメリット・良い点
- とにかく小さい。Bossのコンパクトエフェクター+αぐらいのサイズ。
- とにかく安い。その割に手を抜いてる感が無い。
- 空間系、モジュレーション系が凄く良い。変体サウンドが簡単に作れる。
- トゥルーバイパスではないが、バッファーの質は良い。(パッシプルーパーで実験しましたが、切り替えても違いが分からないです。)
- 1台で172種のペダルがスタンバイしている状態なので、アナログペダルを大量に数珠繋ぎするよりも音質的に有利な場面が考えられる。
MS-50Gの不満点
- アンプシミュレーターとしては、良くは無いと思います。
- 歪み系も、自分には不十分です。
- トゥルーバイパスではないので、どうしても気になってしまう人はいると思う。
- イコライザー系があんまり無い。2Bbandのパライコは良かったですが、HPF・LPFや、音痩せしないグライコ等、デジタルらしいEQが欲しいです。周期変化やステップ、トリガー系はいっぱいありました。
- エクスプレッションペダルを挿すところが無いのでワウが踏めない。
メーカー様への個人的な要望
- ディレイ・リバーブ系にHPFを付けて下さい。
- デジタルの良さを生かした、アナログのモデリングではないEQに力を入れて欲しい。
- MIXに使いたいので、デジタルのIN/OUTを搭載して欲しいです。 G3系とか上位機種のみでも構わないので
- MS系でエクスプレッションペダルを使えませんでしょうか。ミニプラグ接続でも良いです。
- キャビのシミュレートにインパルスレスポンスを使っているようでしたら、自分で用意したIRファイルを使えるようにして頂けると、伝説の神機材として長く語り継がれる事請け合いです。
軽い気持ちで書き始めたのに、えらい長大な読み物になってしまいました。全部読んで下さった方は本当に有難う御座います。
以上にて終わります。お疲れ様でした。